会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2021/05/13

  今回、従業員の子どもが1年間海外に留学することとなり、留学中の健康保険の取扱いについて相談があった。そこで、社労士にどのような手続きが必要になるかを確認することとした。

 大学3年生になる従業員のお子さんが、今度、海外に留学することになりました。新型コロナウイルス感染症の関係で出発時期は未定ですが、留学期間は1年間の予定で、状況によっては延長になるかもしれないとのことです。

 1年間は長いですから、従業員のご家族は寂しく思っているでしょうね。

 そうですね。既に留学の準備を始めているようなのですが、海外で病気になったり、ケガをしたりしたときの心配をしているようです。海外ではいま使っている健康保険証を使うことはできませんよね。

 はい。健康保険証の利用はあくまでも日本国内の医療機関等での取扱いになりますので、海外の医療機関の窓口等で提示しても利用はできません。したがって海外療養費として立て替え払いをしていただくことになります。この海外療養費の説明の前に、被扶養者の要件について説明しておきましょう。

 よろしくお願いいたします。

 実は、2020年4月に改正健康保険法が施行され、健康保険の被扶養者の要件に国内居住要件が設けられました。この改正では、2020年4月1日以降の被扶養者については、これまでの被扶養者が被保険者に生計維持をされていることという要件に加え、日本国内に住所を有する(住民票がある)ことが要件として加わりました。

 ということは、この従業員のお子さんは、海外留学中は従業員の健康保険の扶養から外す必要があるのですか?

 原則はその取扱いになりますが、留学生や海外赴任に同行する家族など日本国内に生活の基礎があると認められる場合、国内居住要件の例外(海外特例要件)として取り扱われ、被扶養者として認められることになっています。

 なるほど。今回は留学生に該当し、海外特例要件が認められるだろうということですね。その海外特例の要件に関して、何か手続きをする必要はありますか。

 はい。海外特例要件に該当するときや該当しなくなるときには、「健康保険 被扶養者(異動)届」にて手続きを行っていただく必要があります。

 なるほど。扶養であることに変わりはなくても、手続きが必要なのですね。手続きの際、何か証明するような添付書類は必要になりますか。

 はい。海外特例要件に該当するケースはいくつかあるのですが、そのケースごとに必要な添付書類が決まっています。該当するケースと添付書類をまとめたものが下表になります。

※図はクリックで拡大されます

 今回は表中の1に該当するということですね。早速、従業員に添付書類を準備しておくように伝えます。

 よろしくお願いいたします。

 それで、実際に留学中に病気になったりケガをしたりしたときは、海外療養費を利用するということでしたよね。

 はい。いったん医療費等の全額を医療機関の窓口等に支払い、海外療養費として請求することになります。その際、海外療養費の支給対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。例えば、美容整形やインプラント等、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が使用された場合は、給付の対象になりません。また、領収書の原本のほか、診療内容明細書が外国語で記載されているときには、日本語に訳した書類の添付が必要となります。

 なるほど。日本国内でも健康保険証がないときに、いったん全額を立て替える仕組みと同じですね。ただし、すべての医療行為が給付の対象とはならないということなので、そのことを従業員に事前に伝え、必要に応じて民間の保険への加入も検討してもらったほうがよいですね。

 そうですね。慣れない環境で体調を崩すこともあるかと思いますので、事前に説明をして少しでも安心してお子さんに渡航してもらえるようにしておくとよいでしょう。

>>次回に続く



 協会けんぽに提出する多くの書類は、各都道府県支部宛になりますが、海外療養費については一括して神奈川支部でとりまとめられています。提出先は神奈川支部になっており、各都道府県支部に提出したときには、神奈川支部に回送されることになっています。添付書類も受けた医療行為や投薬等によって異なるため、事前に漏れがないかを確認の上、提出するようにしましょう。

■参考リンク
日本年金機構「従業員の家族が海外居住の場合の手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/kyojuyoken.html
協会けんぽ「海外で急な病気にかかって治療を受けたとき(海外療養費)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3120/r138/

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 


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